【11時間の旅】中国の寝台列車で一夜を過ごして得た「たったひとつの教訓」

日本でかつて長距離移動の主力選手だった夜行列車は、現在かなりその数を減らしている。わずかに残った寝台列車も移動の手段というよりは、その情緒を楽しむという存在意義が大きいようだ。

片道数万〜数十万円する豪華寝台が大人気で、チケットが抽選になるというニュースをたまに耳にする。飛行機や新幹線の何倍もの時間とお金をかけて乗車する価値が、寝台列車にはあるのだろう……たぶん。「よくわかんないけど1度乗ってみたい」と思っている人は多いはずだ。

日本の約26倍の面積を有する中国では、現在も多くの夜行列車が運行しているのだという。庶民にもお手頃な価格設定だ。せっかく中国へ遊びに来ているので、チョッピリ怖いけど乗車してみることにした。異国の列車で夜を明かすなんて、旅のプロみたいでカッコいい!

・ビビらなければ簡単

今回乗車するのは『D列車』というタイプで、寝台列車の中では一番ランクが高いもの。上海〜深センを11時間強で結ぶ。中国の列車にはランクがあって、同じ区間を約2倍の時間かけて激安走行する列車も存在しているが……初心者なので無難なチョイスで勘弁して頂きたい。

運賃は日によって変動し、この日は760元(約1万1900円)。これは飛行機と大差ない。しかし1泊ぶんのホテル代が浮くので、ものは考えようである。下段ベッドだと830元と言われたが、違いが分からず安い上段ベッドを予約した。これがのちに悲劇を招くとは思いもしなかった。

チケットは日本語サイトで簡単に予約可能である。パスポートの提示が絶対なので忘れないようにしたい。窓口でもゲートでもパスポートを見せれば「ああ、外人ね」と行くべき方向へ手招いてくれるので、とにかく行っちゃえばなんとかなる。言葉が分からなくても無問題だ。

高速鉄道専用の駅は空港のよう。日によってはメチャ混むらしく、出発2時間前くらいには到着しておくと安心である。

窓から内側をのぞき込むと……

ワーーーーッ! なんか素敵じゃん! 過ごしやすそうジャン!

・人生最大のミステイク

結論から先に申し上げると、私がこの旅で学んだ「皆様にお伝えしたいこと」はたったひとつ。とても重要なことなので、できれば声に出して読んでいただけると幸いだ。せぇ〜の……

「中国で寝台列車に乗るときは、日程をずらしてでも下段ベッドを予約するべし」

4人1部屋の個室ドアを開けてビックリ……なんと、上段ベッドからは鉄道の醍醐味たる「車窓の景色」が見えない仕様なのだ。景色を見ないで11時間も何すんの? おまけにハシゴも見当たらない。同部屋の男性にたずねると……

壁に収納されたちっちゃい出っ張りに片足をひっかけ、「よっこいしょ」と勢いをつけてよじ登るシステムとのこと。パンツ丸見えであるうえに、これは想像以上に筋力を要する。年配や足腰の弱い人には登ること自体が困難なのではないだろうか。

サイドには手すりがあるのみだ。大きく揺れたら簡単に落下しそうだけど大丈夫なのか? 寝相が悪い人は注意が必要。

見下ろすとゾッとする高さである。

荷物を置くとスペースは結構キツキツ。大きなスーツケースがあったらジ・エンドだ。

隣の人との間隔はごくわずか。ちょっと隙間の空いたダブルベッドやないか。座ると天井に頭がぶつかるし、寝る以外何もすることがないぞ……。

それにひきかえ下段は、ベッドがソファの役割も果たしていて寝ようが座ろうが自在だ。床スペースの利権について詳細は不明だが、実質下段の人のものという雰囲気なので荷物も置き放題。しかもテーブルに飲み物までついている。

下段の2人は、過ぎゆく景色を眺めながら楽しげに酒など飲み始めた。いっぽう私は足も伸ばせず揺られるのみだ。たまに隣のお兄さんと目が合えば若干気まずい。トイレへ行くのもひと苦労。たった70元(約1090円)でこれほどの差が生じていいものなのだろうか?

わずかな金をケチるかケチらないか。その選択を迫られる場面が人生には幾度となく訪れる。たいした考えもなくケチり続けてきた私は、上段ベッドで天井を見つめながら「人生を見つめ直そう」と思ったね。マジで。

・安住の地それは食堂車

どうしても車窓を眺めたかったので車内を探索することにした。通路には折り畳みの椅子が備え付けられており、座って外を眺めることも可能ではあるのだが……

すげぇ邪魔なので座りづらいのだ。

歩きざまにヨソの個室に目をやると、同じベッドでイチャつくカップルなどが目に付く。あんなのと同室になったら行き先は地獄であろう。私の同室は穏やかな中国人男性3人で、いびきは少しうるさいが平和であった。席運も列車旅の重要なポイントだ。

しばらく歩くと、はじっこにお待ちかねの食堂車を発見した。

食べ物はスナック類と、チンするタイプのラーメンか弁当しかないという。ウマいわけはなさそうだが、旅の記念に30元(約470円)のラーメンとジュースをオーダー。この金で下段ベッドに寝たかった……という話はもう忘れたい。

ラーメンはぬるくてホニャホニャ! これも旅の醍醐味というやつな気がする。

この車両は食堂車というより憩いのスペースで、注文しなくても利用可能であるようだ。ビジネスクラス並にゆったりフカフカな椅子、大きな机、流れる景色……。寝台にいるよりよっぽどいいと思ったが、利用者は少なめである。旅情を楽しみたい派は中国には少ないのだろうか。

食堂車で3時間ほど過ごし、寝台に戻るとお弁当が置かれていました。外国の日常は我々の非日常なのだな。

・うーん、寝ちゃった

横になるだけのつもりが寝てしまったようで、気づけば夜は明けていた。狭いだの怖いだのと文句を言っていたわりに、ベッドは非常に快適な寝心地で疲れがバッチリ取れている。転落した形跡もない。

車窓から眺める景色は田園風景から次第に「伸びゆく中国」といった風情の都会に移りゆき、目的地はもうすぐである。

体感としては本当に「あっという間」に深センへ到着!

人々が車内でタバコを吸ったり通路にゴミが散乱しているような、古き良き「中国の長距離列車」の光景には今回遭遇できなかった。それらはどこか別の路線にあるのか、もしかするともう存在していないのかもしれない。ちょっと残念だけど、また機会があれば別タイプの車両にも乗車してみたいと思う。

「D列車」に関しては日本の新幹線と変わらない乗り心地なので初心者も安心である。中には目的地まで数日かかる路線もあるので、鉄道ファンなら一度は中国を訪れてみるべきだろう。その際はどうかどうか下段ベッドを予約してほしい。

参考リンク:Trip.com
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.


Source: ロケットニュース24

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です