イラストレーター・松尾たいこさんの本棚を拝見!「本がないと絶対困ります」

クローゼットや机の引き出しと同様、なんだか覗いてみたくなる他人の本棚。各界の大の本好きに、普段は見せない「奥の院」を見せていただきます。(取材・文/大平一枝  撮影/本城直季

一瞬で未知の世界へ。生活に欠かせないもの

本棚の主は、300冊余の本の表紙画で知られる松尾たいこさん。生粋の活字中毒者だ。本があふれた家で、幼稚園時は世界文学全集を、小学校では島崎藤村を、中高生の頃は1日3冊のペースで図書館で借りていたことも。

「吉行淳之介、田辺聖子、星新一……。日本の作家が好きで、レイモンド・カーヴァーなどは、30代で上京してセツ・モードセミナーに入ってから。田辺さんはいつか表紙を描かせていただけたらと思うけれど、好きすぎてうまくできないかもしれません」

こんなに楽しそうに本について語る人を久しぶりに見た。「家でも旅先でも、どこにいても一瞬で知らない世界、経験していない未知の世界に連れて行ってくれる。本がないと絶対困ります」

BoConceptでオーダーした本棚6段をテーマ別に分けている。好きな海外の作家の画集や写真集コーナー

仕事の資料で使う“日本”コーナー。葛飾北斎、中原淳一のほか江戸時代の陶工、仁阿弥 道八(にんあみ どうはち)や着物柄に関する本も

植物、柄、配色に関する資料本の棚。年に1度もひもとかないものはおもいきって手放す。定期的に見直し、ここからあふれないようにしている

iPad miniは旅の必需品

ところが、書斎には低い本棚がひとつのみ。本好きなのになぜ?

「1年に1度もひもとかなかったら、画集でも小説でも処分します。最近、洋服を買わない暮らしについて書きましたが、もともと断捨離が好き。本も同じです。あふれるほどに持ちすぎたくない」

書斎に並ぶ本は、何度も眺める保存版だけ。あとは電子書籍でまかなう。月に5〜10冊。寝る前に必ず読み、旅先にも必携する。

「東京、軽井沢、福井の三拠点を行き来しているので、iPad minが道中でも気軽に読めて便利なんです。私の暮らしに合っている。これで読んでから紙の本を買い直すことも。海外旅行では10冊ほどダウンロードしていきます。向こうでネット環境が悪くても大丈夫なようにね」

アメリカの美術家アレックス・カッツは、30代で入学したセツ・モードセミナーの年下の友人から教わった。NYで原画を見て感激

多読家の夫に勧められた。文章が自由で奔放。好奇心にあふれ楽しそうに旅をしている。武田百合子さんの人柄にも憧れる

僧侶の山下良道さんから勧められた。「特別宗教や哲学に興味があるわけではないが、本質的なことを教えてもらった気がする」

iPad miniで何度も読み返している田辺聖子さんの『春情蛸の足』。「恋愛小説なら田辺さんだと思う」。高校時代から愛読

エキセントリックなものを撮る人と思いこんでいた荒木経惟さんのイメージが一変した。写真愛にあふれた温かな作品

装画を担当。カズオ・イシグロさん(左)の作はもともと大好きだった。角田光代さんは装画から小説を想起する新しい試みの書

漫画はすべてiPadで。自分の担当した表紙がどう見えるか確認するためにキンドルも持っているが、使い勝手では前者が好き。現時点で600冊入っていた。おもしろくなくて途中で削除したものはもっとあるらしい。旅の必需品にする理由をシンプルに語る。「だって、旅先で本から離れるの、もったいないでしょう?」

活字中毒者の合理的な読書スタイル。あまたの物語は、彼女の脳と、このタブレットにつまっている。

15年ちかく愛用しているボビーワゴンには絵の具、画材、メイクグッズ、財布などを

グローブ・トロッターのメイクボックスは、実は絵の具入れ

松尾さん作の陶画。福井のアトリエで制作

松尾さんの作品の間に飾られているのは、キューバの現地通貨

松尾さんへのQ&A

Q 読書の頻度は?
A 毎晩、寝る前にiPad miniのタブレットで、必ず読みます。本がない生活は考えられないですね

Q 書店に行く回数は?
A ほとんど電子書籍ですが、書店も好きで歯医者のついでなどに東京・恵比寿の有隣堂へ。書店に立ち寄る時間を計算して、家を早めに出ます

Q  好きな書店は?
A ナディッフ本店、今はなくなってしまった渋谷のパルコブックセンター(リブロ)で、よく画集や写真集を買っていました。今は展覧会の帰りにミュージアムショップで買うことが多いですね。過去の出展作家の作品と出会えるので発見が多く、楽しいです

リビングにて。ソファはHIKEで購入した

松尾たいこさん
イラストレーター、アーティスト。広島県生まれ。現在、東京・軽井沢・福井の三拠点で生活。広島の自動車メーカー勤務を経て32 歳で上京。
1998 年、イラストレーターに転身。角田光代著作をはじめ300 冊余の書籍の表紙イラストを担当。2019年12月、新刊「ゆる神様の神社ナビ ころころ古事記」を発売。

※情報は「リライフプラスvol.28」取材時のものです

Source: 日刊住まい