【インタビュー】サブカルイベントに携わって24年 『高円寺パンディット』店主 奥野さんに聞いた「良いイベントの作り方」

業種を問わず、商売は何事も長く続けることが肝要だ。しかし不景気と叫ばれて久しい昨今、1年ともたずに潰れるお店も少なくない。それが特殊な業態のお店となると、やはり存続が難しい。……のだが、サブカルのイベント会場として、6年も存続しているお店がある。

東京・高円寺の多目的イベントスペース「パンディット」は、2013年12月にオープンし7年目を迎えた。店長の奥野テツオさんは、都内の老舗ライブハウスで19歳から修業を始め、イベント業界で24年ものキャリアを積む、生粋の『イベント人間』である。彼に良いイベントの作り方を尋ねた。

・19歳からイベントに携わって24年

実は当編集部では、以前からパンディットでイベントを開催している。過去には、iPhone行列報告会などで、集客の悪いイベントを何度か繰り返し開催。以来、私(佐藤)は奥野さんとたびたび意見交換をさせて頂く仲だ。

佐藤 「これまで何回もイベントをやらせて頂きましたね」

奥野 「最近やってないですよね、iPhone行列報告会とか。一回中止したイベントがありましたよね。覚えてます?」

佐藤 「忘れる訳ないでしょ。ロックな婦人服を集めてやろうとしたヤツでしょ? 「婦人服品評会」」

奥野 「あれは微妙でしたね(笑)」

佐藤 「以前は今ほどイベントのことをよくわかってなかったんですよ(笑)。今日はそこらへんも踏まえて、良いイベントの作り方みたいなものをお伺いしたいと思ってます。そもそも奥野さんは、ロフトから独立して現在に至るまで、ずっとイベントに携わってるんですよね?」

奥野 「19歳の時に、新宿の『ロフトプラスワン』にアルバイトで入って、『ネイキッドロフト』・『阿佐ヶ谷ロフトA』で初代店長を務めさせて頂きました。それからロフトプロジェクト本社の企画制作、ロフトプラスワンの企画に携わって、2013年12月にここパンディットをオープンしてますね」

佐藤 「43歳の現在までイベント一筋ですか」

奥野 「そういうことになりますかね」

佐藤 「ロフトで長きにわたって勤められた訳ですけど、どうして独立しようと?」

奥野 「シンプルに自分の店を持ちたかったんですよね。そういう気持ちって、飲食やってる人と同じだと思うんですけど、いつかは自分の店って思ってましたねえ」

・見えてくるものが変わった

佐藤 「普段の業務はほぼ1人ですよね」

奥野 「経理関係を除けば現場(お店)はほぼ1人。6年間ほぼ1人ですね。まあ、普段はイベントの打ち合わせ、店の営業準備からイベント中は受付やってドリンクを作って、終わったら片づけて、お店でそのまま打ち上げする場合は、またドリンク作ってって感じでやってますね」

佐藤 「一時平日昼間もイベントやってましたよね? その夜もイベントしたりして」

奥野 「はい、『メンズダンスバー』という定期イベントを2年半やってました」

佐藤 「その間も1人?」

奥野 「ほぼ1人です」

佐藤 「ロフトにいた方が良かったんじゃないですか? だって分業できてた訳でしょ」

奥野 「それはそうですけど、見えてくるものが変わりましたね。自分で店を始めたら」

佐藤 「というと?」

奥野 「ロフトの頃は、イベントの主催って企画者の裁量に任せられているんですよね。自分が面白いと思うものを自分で段取りする。そうすると、自分の好みのものしか見えて来ないじゃないですか。店をやるようになると、ジャンルの垣根を超えて、さまざまなイベントに接するこことができるんです。

そうすると、見えてなかったものが見えてくるんですよ。たとえば、セクシャルマイノリティのイベントは、以前よりもお客さんの関心が高まってて、若い人がたくさん来るってことがわかったり、女性が対象のイベントでも、ある一定数の男性客は必ず来るってことがわかったり」

佐藤 「なるほど、ロフトの看板の下では、そういう潜在的な需要が見えて来なかったと」

奥野 「そんな感じですね」

佐藤 「ちなみに女性対象のイベントに男性が来るのは何でですか?」

奥野 「わかりません(笑) わからないけど、女性限定イベントでない限り、ある一定数の男性は確実に来ますね」

・難しかったイベントとは?

佐藤 「セクシャルマイノリティのイベントは需要があるということですが、逆に(集客的に)きつかったイベントは?」

奥野 「ネコは難しかったです。ネコ好きのイベント」

佐藤 「ネコ? え、何でですか? ネコって企画としては鉄板な気がしますけど。テレビや書籍で外さないコンテンツの1つのように思ってました」

奥野 「僕もそう思ってたんですよね。でも、集客が伸びなくて。で、あとから考えたら、“ネコの愛らしさ” ってイベントに参加して見知らぬ他人と共有するものではないみたいだったんですよね」

佐藤 「つまり、飼い猫の愛らしさは、家族や友人・知人など、見知った人と共有するものだと」

奥野 「そういう可能性がありますね。仮にSNS上では知らない人と共有したとしても、実際に見知らぬ人と会って共有するとなると話は別みたいで」

佐藤 「そうかもしれないですね。ネット上では成り立つコンテンツでも、リアルになると途端に怪しくなる感じがします。俺のようなオッサンがリアルで「ネコ好きなんです~」って女性に話しかけるとしたら、価値観を共有する前に怪しさがあふれ出してしまいますもんね」

奥野 「『愛でる』って感情をリアルイベントで分かち合うのは、微妙なところがありますね」

・イベントを開催する基準

佐藤 「そうすると、パンディットでイベントをする基準って難しくないですか? 「ネコ好き」みたいなある意味、やってみないと分からないものもあると思うんですけど」

奥野 「必ずしも、客入りがいいから良いイベントになったとも思っていないんですよね。たとえば、内輪のオフ会みたいなものもあったりしますけど、そういうものに企画の強さはそこまで求めてない訳で」

佐藤 「そうですね、内輪とわかっている以上は、お店としても断る理由がないですよね」

奥野 「そうなんですよね。僕が基準にしてるのは、「自分が客として行ってみたいか?」ってところなんですよ。うちみたいな小さな箱だと、初めてイベントをやってみるって人もいるんですよね。考えはあるけどやり方がわからないって人もいるんですけど、それはそれでやりようはあって、企画が面白ければ、自分のコネでゲストを紹介したり、MCとれる人を紹介したりできるんですよね。

ひとつの例としては『キモくて金のないおっさんはどうやって生きたらいいのか?』ってイベントの持ち込みがあったんですよね。だいたいイベントの主軸って演者なんですよね。演者ありきで全体を考えるんですけど、そうではなくテーマそのものに社会的意義があることが、自分にとって新しいと感じたので、即答で「やりましょう」って答えました。イベントを開くことで、僕も来場者も、考える要素があることが大事だと思ってます」

佐藤 「でも、それは必ずしもイベントが成功する基準ではないですよね」

奥野 「そうですけど、イベントをやる意味はあります。社会的意義があると思っていますから」

佐藤 「では、良いイベントとは、奥野さんが客として行ってみたいイベントの企画かどうかってことになりますね」

奥野 「いや、そうではなくて、その主催する人が自分で「金を払ってでも行ってみたい」と思うものになっているか? が大事ですよね。自分が見てみたいと思うものを、作れるかどうかだと思います。

ついでに言うと、イベント内容が良ければ、曜日関係なく満員になります。うちの客層は30歳オーバーでお金の自由がきいて、自分の興味に素直に行動する人が多いですね。で、そのくらいの年齢層になると土日は家族サービスで身動きがとれないので、やるなら断然平日。それも月曜日がベストですね。木金は仕事が溜まっている場合があるので、週前半が良いでしょうね」

・新しいことを今から学んでもムリ

佐藤 「実際お店では、ほぼ毎日みたいにイベントを行っているじゃないですか。それも社会派のものから、写真家やライターのトークショー。地下アイドルやYouTuber、ゲーム実況などなど。イベント内容の全部を把握することって難しいですよね? そういうものを吸収する時間って作ってるんですか?」

奥野 「ムリですよ! 1人で業務全般をこなしてるのに、新しいものを頭に入れる時間なんてある訳ないじゃないですか。それでなくても、僕ら40代が新しいことを今から学んでもムリだと思いませんか?」

佐藤 「わかりますよ、全然頭に入ってこない。この身をもって知ってます。まあ、不可能ではないですけど、お店のスケジュールを見る限り、ジャンルが多岐にわたりすぎてて、すべてを網羅して学ぶのはかなり難しいでしょうねえ」

奥野 「だから僕の場合は、自分が学ばずに済む方法をとってます」

佐藤 「自分じゃなかったら? 誰かに任せていると」

奥野 「そうです。YouTuberならYouTuberのトレンドを追いかけるのが得意な人に。ゲーム実況ならゲーム実況が好きな人に、その情報を聞くようにしてるんです。自分1人しかいないから、それをゼロから学んでいる時間なんかないんですよね。だから得意な人の協力を仰ぐようにしてます。それも、独立したから出てきた知恵で、人とやってたら、多分そんな工夫は生まれなかったでしょうね」

佐藤 「何か独立したことで、奥野さん自身が強くなったんじゃないですか?」

奥野 「そうかもしれないですね。とにかくこれからもパンディットで面白いと思えることをやって行きたいんです。自分ひとりでできる工夫はおそらくそろそろ限界が来ていると思うので、これからは一緒に面白いイベントを考えられる人材が欲しいです。まだまだ世には知られていないけど、すごい活動してる人、変人、マニア、ぶっ飛んだ企画などを紹介していきたいですよね」

佐藤 「最後にもう1つ質問です。良いイベントを企画する人ってどういう人ですか?」

奥野 「良い主催者って、「やりたくてやる」って気持ちが強いんですよ。やる人はやるんです、金がなくてもやるんです」

佐藤 「そういう熱量みたいなものって大事ですよね」

奥野 「その熱量が人を動かすので、熱量の高さが大事じゃないかなと思います。もしも自分のなかに煮え切らないものがあるのなら、その熱くなる要素が必要なんじゃないですかね」

佐藤 「そうですよね。今日はありがとうございました」

取材協力:高円寺パンディット(東京都杉並区高円寺北3丁目8-12 フデノビル2階)
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24


Source: ロケットニュース24

「スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け」特別インタビュー / レイとデイジー・リドリーの重なり合うところ

2019年12月20日、映画『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』がいよいよ公開される。日本のみならず世界中でスター・ウォーズ旋風が巻き起こる予感がする中、当サイトでは特別企画として「インタビュー5連発」をお届けしてきた。

そのトリを飾るのは、主人公のレイ役を演じる「デイジー・リドリー」だ。エピソード7からの新3部作で主役を演じ続けてきた彼女は、果たしてレイにどのような影響を与えたのだろう?

・レイが何者なのか判明する

常に新3部作の中心にい続けたレイ。エピソード8の時点で彼女が何者なのかは明かされていないが、デイジー・リドリー本人は「今作でレイの出生の秘密が判明する」と公言している。

その他、カイロ・レンとの関係やジェダイの行く末などなど、気になることは非常に多いが、まとめてデイジー・リドリーに聞いてみることにした。

──まずはデイジー、完成した作品をご覧になった率直な感想を聞かせてください。

「もう最悪だったわ……というのはウソ(笑)。想像していたより遥かにスゴイ映画になっていて、もう圧倒されたわ」

──おお、良かった。

「きっとみんなが思っているよりユーモアがあふれる作品になっていると思う。レイ役を演じるにあたってダークな部分の心構えもしていたんだけど、実際の現場では笑い声があふれていたの。そういう雰囲気も出ているんじゃないかしら」

──なるほど。

「ストーリー的にはエモーショナルで感動的だし、ビジュアルもゴージャスよ。きっと全ての人たちが少なくとも1つは何かしらの魅力を感じ取ってくれると思っているわ」

──あなたの想像を超えてきましたか?

「こういう仕事をしていると、全ての作品で “最高だった” と言えないこともあるの。でも “スカイウォーカーの夜明け” は最高よ(笑)

──ふむふむ。

「現場の雰囲気が本当に良かったから、作品を気軽な気持ちで観れたことも大きかったわ。脚本も演技も撮影も音も、現場にいたときから本当に最高だったの。だから完成した作品を観る前のプレッシャーはほとんどなかったわ」

・出生の秘密

──そうでしたか。では次に話せる範囲で映画の内容について聞かせてください。

「OK」

──本作ではレイの出生の秘密が明かされるとのことですが、脚本を初めて読んだときはどう思いましたか?

「そうね…… “本当に?” と思ったわ」

──おお。

「きっとみんなも驚くと思う。ただ、前から私が思っていたのはレイというキャラクターの出自はもちろん興味深いんだけど、もっと重要なのは彼女がいまどこにいるのか? ということなんじゃないかしら?」

──なるほど。

「彼女がどんな選択をして、どんな道を選ぶのか? どんな家族を選ぶのか? レイにとってはそっちの方が大切だと思うの。でもみんなが気になる気持ちも理解できるわ。その中心にいるのは……やっぱり楽しいかもしれないわね(笑)」

──やはり1番気になるポイントですからね。

「詳しくは言えないけど “クールだと思う” とだけ言っておきましょう」

・カイロ・レンとキャリー・フィッシャーのこと

──わかりました。次にカイロ・レンについて聞かせてください。

「絶対に聞かれると思ってた(笑)。実は今朝、J・J・エイブラムス監督に “カイロの質問をされたらどう答えればいい?”って聞いたところなの。なのでそのまま伝えるわ」

──お願いします。

「レイとカイロ・レンは光と影、つまり陰陽の関係なの。どんな光の中にも少しの影があり、逆にどんな影の中にも少しの光がある。2人はそれを象徴していて、だからこそ惹かれ合う関係なの」

──わかります。

「きっとカイロ・レンに闇落ちして欲しくなかった人も多いと思うけれど、今回の彼はさらにダークな道のりを辿るわ。それに引っ張られてレイが闇落ちするのかは……見てのお楽しみね」

──なるほど。

「アダム・ドライバーは素晴らしい俳優だし、彼と光と影の関係を演じるのはとてもエキサイティングだった。スカイウォーカーの夜明けで、さらに進化した2人が観られることだけは約束しておくわ」

──それは楽しみです。では次の質問をさせてください。本作にはキャリー・フィッシャーさんが出演されます。彼女とのエピソードがあれば教えていただけますか。

「残念だけど、彼女が私に伝えてくれた言葉は言えないわ。とても悪い言葉だから(笑)

──そうなんですね。

「エピソード7でレイとレイアが初めて出会ってハグするシーンを覚えてるかしら?」

──もちろんです。感動的なシーンでしたよね。

「そう、とてもエモーショナルなシーンだったんだけど、彼女は私の耳元で “こんなに長いF●●Kなハグは初めてだわ”って囁いていたの。とてもキャリーらしいと思わない?」

・レイとの共通点

──本当ですね。映画の内容についてはこれくらいにしておきます。次の質問はやや難しいと思うので、じっくり考えてください。

「OKよ」

──あなたはエピソード7から今作まで、3度レイを演じました。レイというキャラクターはあなたに何を与えてくれましたか? そして逆にあなただからこそレイに与えられたものはなんですか?

「本当に難しいわね(笑)。そうね……。実のところ、私とレイの境界線を区切るのは簡単じゃなくなっているの。どこからが私でどこからがレイなのか? 自分でもわからなくなるときがあるわ」

──ふむふむ。

「ただ、私はレイのように世界の運命を背負っているワケじゃないから、彼女のようなヒーローである必要はないし、いつも勇気を振り絞る必要はないわよね?」

──そうですね。

「もし私がレイに何かを与えたとするなら、たぶん “intensity(インテンシティ)” だと思うわ」

※ intensity …… 苛烈、激烈、激しさ、などの意味

──インテンシティですか。

「私は何かをするとき、いい意味でも悪い意味でも常に100%全力なの。中途半端なことはしないわ。もしかしたら私のそういう部分は、レイの性格にも影響を与えたかもしれないわね」

──なるほど。実は私はあなたにお礼が言いたかったんです。私には3歳の娘がいるんですが、名前はレイと言います。

「リアリィ!?」

──本当です。フォースの覚醒のときにお腹にいて、それでレイと名付けました。あなたがレイを演じていなかったらレイとは名付けていなかったかもしれません。

「ワーオ。アリガト(日本語で)」

──ただ、きっとレイに憧れてレイと名付けられる子供も多いと思うんです。そういうことはプレッシャーになったりしますか?

「子供の名前をレイにするなんて初めて聞いて、とても感動しているわ。でもプレッシャーは感じないかな? 確かに私はレイを演じさせてもらっているけれど、レイは脚本家や衣装さん、その他大勢の人が作り上げてくれるものだし、みんなでその美しい責任を分かち合っているから」

──美しい責任、いい言葉ですね。娘がレイのように強く優しく育ってくれることを願っています。でもレイが闇落ちしたらどうしよう?

「レイがどうなるかは……見てのお楽しみね(笑)」

結局のところ、スカイウォーカーの夜明けは「レイが何者なのか?」そして「レイはどうなるのか?」が大きな焦点になることは間違いない。いわば新三部作は「レイとスカイウォーカー家の物語」なのだ。

大変なプレッシャーもあっただろうが、レイを演じきったデイジー・リドリーもまた見事である。果たしてレイの行く末は? 映画『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』は2019年12月20日公開だ。

参考リンク:映画「スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け」公式サイト
Report:P.K.サンジュン
Photo:(C)2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.堤博之 / RocketNews24.


Source: ロケットニュース24

【インタビュー】活動30年で絶頂を迎えるロックバンド「人間椅子」に、なぜ活動し続けられるかを尋ねた

「10年ひと昔」というが、時は音もなく流れ、気が付けば多くの物事を過去へと押し流していく。10年も経てば新しかったもののすべてが古くなり、今の流行りでさえも「思い出」の一部と化していく。鮮やかな色彩は輝きを失い、遠くを見るような眼でその存在が認められるのみ。

そんな時間の理(ことわり)を覆すバンドがいる、「人間椅子」だ。彼らは活動歴30年を迎えて、ますます衰えという言葉から遠ざかっている。30年もの長きにわたって活動を続け、なお勢いを増すその理由が知りたい。ということで、今回は率直に30年の活動について質問をぶつけてみた。

・自然な選択

佐藤 「今日もよろしくお願いします。今まで何度もインタビューはさせて頂いてますが、今日は率直、いや愚直な質問をぶつけさせてください。なぜ30年も続けることができたんでしょうか? 活動を休止したりやめることは考えなかったのでしょうか?」

和嶋慎治(ギターボーカル) 「何かのタイミングがあるとしたら、10年が1つの節目なんですよね。10年を超えると、物事って割と続けられる気がするんですよね」

佐藤 「では、活動を始めてから10年というところで、今に至る20年30年は想像できてましたか?」

和嶋 「僕個人としては活動を始めた頃に、30歳を超えてバンドをやっていることをイメージできなかったんですよね。それで30過ぎた時に『あ、バンドやってるな』ってことを感じて、このままずっとやっていくのかなってのを自分なりに感じましたね」

佐藤 「その時に、バンドをやめるみたいな考えはありましたか?」

和嶋 「30代って、まあみんなそうだと思うけど、仕事でも責任ある立場になったり、家庭を持つようになったりするタイミングだと思うんだけど、自分たちは『バンドをやる』って選択をしたので、この道で行くって決めて後戻りするつもりはなかったですよね」

佐藤 「いわゆる社会生活とバンド生活を天秤にかけて、『バンドをやめる』っていう選択は……」

和嶋 「なかった。全然なかったですね。『人間椅子』ってバンドがほかのバンドとは違うって自負がありましたし、自分たちの音楽に自信があったんですよね。当時売れてはいなかったけど、とにかく続けられるって自信は何かありましたよね。厳しくなったのは、20周年くらいかな? 30年の間で1番売れてなかった頃だから」

佐藤 「では、最初の10年は自然に通過して、自然とバンドを続ける選択をした訳ですね」

和嶋 「そう、自然な選択ですね」

佐藤 「20周年の時も、バンド活動を継続することについて、迷いは感じましたか?」

和嶋 「先ほども言いましたけど、10年よりも20年の方がより苦しくなってますからね。でも、『ここでやめてなるものか!』と歯を食いしばる感じになってた気がしますね(笑)

・やめる選択肢はなかった

佐藤 「鈴木さんは10年経った頃、活動を続けることに迷いってありましたか?」

鈴木研一(ベースボーカル) 「結構最初の方から、売れなくなったら一生懸命バイトして、バンドを続けるってつもりでやってましたね。ここ3~4年は他に仕事をせずに安定して活動を出来てますけど、この先、また売れなくなったらまたバイトするし。日本に生まれてよかったですよ、東京ならいろんなバイトがあるから(笑)」

佐藤 「バイトをしてでも、バンドを続けるって気持ちがあったんですね」

鈴木 「そうですね。和嶋くんもそうだと思うけど、金がないのが苦痛じゃないというか、金がないなりの生活をすることがずっと何十年も続いていたから。米と塩だけあればいいって生活にも、今だって戻れるしね。生活にそういう起伏があっても、バンドをやめるって選択肢はなかったですね」

佐藤 「では、この先もやめるってことはお考えではないと」

鈴木 「この先は~……。さすがに大病を患ったら、もうやめる」

一同笑い (※ 鈴木氏は2019年9月、尿管結石を患ったばかり)

鈴木 「もうやめて、終活して、好きなことする」

佐藤 「体力の続く限りやるってことですね(笑)。活動を続けるのに、金のあるなしは関係ないと」

鈴木 「そうですね」

・自分の人生はバンドをやり続ける

佐藤 「ノブさんは、人間椅子在籍15年。1988年(当時の在籍バンド「GEN」)からバンド活動を続けてきて、10年、20年と節目の度にやめようみたいに考えたことはないんですか?」

ナカジマノブ(ドラムボーカル) 「一度もバンド活動をやめるなんて、考えたこともないですね。頭をよぎったことすらない。俺も30年活動をしてきて、経済的にゆとりがあったことなんかほとんどなくて、多分、今が一番、いろんな意味で充実してると思うんですよね。だから、若い頃は工事現場で働いたりもしてるしね。

お金のことも、まあ活動に影響あるとは思うんだけど、和嶋くんも研ちゃん(鈴木)も言ってたけど、結局バンドが好きなんですよね。音楽をやる人の呼び方っていろいろあるでしょ? 『ミュージシャン』とか『アーティスト』とかあるけど、僕は自分のことを『バンドマン』だと思っていて、それくらいバンドが好きなんですよ。だから、『音楽で食っていく』ってことよりも『自分の人生はバンドをやり続ける』と捉えているんですよね

佐藤 「それはもう経済的な理由に、バンド活動が左右されていないことになりますね」

ナカジマ 「そうかもしれないですね。バンドが好きでバンドでドラムを叩くのが好きですね。それさえ続いてたら、何も苦じゃない。だから、バンドをやめる選択は元々ないですよね」

佐藤 「この先も体力が続く限りですか?」

ナカジマ 「う~ん、体力が続かなくなってもやりたいですよね(笑)」

・生きている実感

佐藤 「楽曲の創作についてもお尋ねしたいんですが、創作意欲はデビュー当時と比べて変化したと感じていますか? それとも変わらないですか?」

和嶋 「それは変わらないですね。多少の波はありますよ。ありますけど、自分が1番好きなのは創作すること。『生きている実感』を得られるのが、創作することなんですよね。だから、それがなくなったら、生きてる甲斐がなくなる感じがするなあ」

佐藤 「和嶋さんが生きてる所以(ゆえん)が、人間椅子での曲を作ることにあると」

和嶋 「そういうことになりますよね」

佐藤 「もし仮にですが、アイディアが枯渇したとかで、楽曲を作れなくなったとしたら?」

和嶋 「作れなくなったら、ダメになるでしょうねえ。僕は怠け者だから。でも、作れなくなるとは思っていないなあ。というか作れると思ってるから、作れるんですよ。作れると思っている限り、作品を作り続けます」

佐藤 「この先もまだまだ作品を聞くことができるのは、こちらとしても嬉しいです。アルバム制作についてもう1つ伺いたいんですが、毎回作品ごとに持てるすべてを出し切ってると思います。いつもベストを尽くされていると思うんですが、次の作品を作る時に、またゼロからのモチベーションで挑むんですか?」

和嶋 「毎回出し切ってますよ。でもね、1つの作品が出来上がったその瞬間から、自分のなかで批判精神が働くんですよね。鈴木くんとも時々そんな話をしますけど、すべてを出し切ったのは確かなんですけど、出来た作品を聞き直してみた時に『何か足りない』と感じるところがあるんですよね。

毎回、作ったものに100点って絶対につけられないんだよね。がんばって90点行ったけど、足りない10点あるなって。アルバム出来たその瞬間から『次は100点とれるようにがんばろう』って思ってるんですよね」

佐藤 「でも、アルバム制作を始められる時は100点を目指している」

和嶋 「そう。だからすごく苦しいんですけど。創作は生きてる充実感を得ることが出来るけど、挑み続けているから苦しいですよね。先ほど『20周年の頃は苦しかった』と言いましたが、あの頃があって本当によかったと思ってるんですよ。

『アーティスト』として、あの頃にアートの “核” みたいなものを、自分のなかでつかんだんですよ。うまく言葉で表現できないんですけど。その確信があるから、作品を作れなくなるとは全然思わなくなったんですよね。苦しい頃もあってこそ、今の作品があると思っています。だから、30年やってきて良かったと思っていますね」

佐藤 「売れない時代があったとしても、その時間は糧になっているんですね」

和嶋 「そうですね。無駄ではなかったと思っています」

・瀬戸際でいいモノが作れる

佐藤 「鈴木さんはこの30年で創作に変化を感じますか?」

鈴木 「自分の場合は、和嶋くんが言うような感じとは少し違うと思うんですけど、いいリフが浮かぶうちはまだ作れると思ってますね。幸いハードロックはいいリフさえ浮かべば、いい曲に発展する可能性を秘めているので、そこにいいメロディがのせられるうちは、まだまだやっていけると思ってますよ」

佐藤 「鈴木さんは、アルバム制作の前段階で、毎回500個くらいリフを作られるじゃないですか。それはいつも500を目指して作るんですか?」

鈴木 「いや、500個全部を使う訳ではなくて、ほとんどボツになってしまいますけど、500個くらい作っておけばアルバム5曲分にはなるかなと思ってます。そのリフを元に、パズルを組み立てるみたいに曲に組み上げていくんですけど、500個のリフを聞き直すのも時間かかるんだよね。

イマイチだなあと思ったリフを、翌日に聞くとさらにイマイチだなって思ったりしてね。イマイチイマイチ……を繰り返していると、砂の中に “キレイな石” を発見するみたいに、キラリと光るものを見つけたりするんだよね

佐藤 「作品が出来上がった後に、作ったリフはどうするんですか? また次の作品のために保管するんでしょうか?」

鈴木 「録音したものは全部消しますね

佐藤 「え!? もったいなくないですか? せっかく作ったのに」

鈴木 「だって、次のレコーディングの時に『リフができない!』って苦しかったりしたら、前のアルバム用に作ったリフを聞いちゃうから。出来損ないを引っ張り出してそれをあてにするのが嫌なので、レコーディングが終わったら消します」

佐藤 「でも、もったいないですよね」

鈴木 「前の作品の時に使わなかったってことは、イマイチだったってことでしょ。だから消した方がいいんですよ(笑)」

和嶋 「文章ならまだ再利用出来るかもしれないけど『音』はねえ。言葉じゃないものは、過去のものを掘り出して使うって良くないと思うんですよ。レコーディングの期間中に、創作に没頭していると、イケてる瞬間ってあるんです。いわゆる『ゾーンに入る(極度の集中状態のことを指す)』みたいなタイミングが。その時に生まれたモノと、そうじゃない時に生まれたモノって、輝き方がまったく違うんだよねえ。だから残してもしょうがないんですよ。

作品を制作している期間中、その集中している時のゾーン状態って、作り出すモノにちゃんとつながってるんですよ。次の作品の時に前のモノを持ち出しても、やっぱりつながってない。しっくり来ないね」

鈴木 「レコーディング期間は4カ月あるんだけど、4カ月毎日やってても、スッといいモノは生まれない。時間にゆとりがある時に、じっくり考えて作ってみても、次の日に聞くとイマイチだったりね。最後の何日間に、偶然集中できる時があってね、いきなりその集中期間に入っていけるかっていうと、そうでもない。その前に無駄な時間を過ごすから、最後の方の集中期間に入れるみたいなんだよねえ。その瀬戸際でいいモノが作れる」

和嶋 「そうだよね、その前段階の創作の苦しさみたいなものを通らないと、集中できる期間にたどり着けない」

・小さな変化

佐藤 「ノブさんも創作の意欲について感じることはありますか?」

ナカジマ 「創作については和嶋くん・研ちゃんよりも少ないんですけど、この30年、少なくとも人間椅子に入ってから、少しずつ自分でステップアップしている実感はありますよ。メンバーになってから、初めてリフからの曲作りを経験したし。機材面も最初の頃より充実して来てるし。そんなもの含めて、創作に対する面白味が増えている感じですかね」

佐藤 「iPadの『GaregeBand(楽曲創作アプリ)』で作ってるって言ってましたね」

ナカジマ 「そうそう、iPadにつなぐインターフェイスを買ってみたり、エフェクターを借りてみたりね。レコーディング期間はギターも弾くんですけど、その期間中はゾーンってほどではないけど、集中してるからちょっとずつギターが上達するんですよ」

佐藤 「期間中にご自分のなかで、いろいろ変化を感じられるんですね」

ナカジマ 「小さな変化かもしれないけど、自分では感じてますよ。作ることも楽しいですね。その楽しみがある限り、創作意欲が衰える気がしないですね」

佐藤 「作品を経るごとに、できることが増えるって楽しいですね」

ナカジマ 「次は何をしてやろうかって思っちゃうよね(笑)」

・客観的に自分を見ること

佐藤 「長く活動してると、いろいろな声が耳に入ることがあると思います。作品ごとに肯定的な意見や否定的な意見。時には『昔の方が良かった』なんて言われることもあるんじゃないでしょうか?

和嶋 「そりゃありますよ。ところで、いわゆる『迷走』することって、誰にでも可能性のあることだと思うんですけど、それって自分の思い入れがあまりにも強いがゆえ、生じると思うんですよね。結局何をやりたいのかわかんなくなっちゃって。そういう時に有難いのは、『パブリックイメージ(一般に認識されているイメージ)』なんだよね。

周りが自分らに何を期待しているのか、求めているのか。一旦自分から離れて、客観的に自分を見てみると『ああ、自分が求められていたのは、これだったのか』って発見できると思うんですよね。それを認めると、迷いがなくなると思うんですよ。

例としていうなら、長年やってる定食屋さんが突然味を変えたりすると、足しげく通ってた常連さんとか、口コミで評判を聞いた新規のお客さんとか、みんなガッカリするんですよ。人が求めているものを分かっていれば、そんな悲劇は起きにくいよね」

佐藤 「外から聞こえる声は、自分たちの客観的な評価ってことですよね」

和嶋 「意見の内容を問わず、求めている声には耳を貸すべきでしょうね。長年やるには、良い意味で自分を殺すべきかなと思います。自分の思い入れだけで突っ走るなら、趣味で良いと思います。プロである以上は、客観的に自分を見ることも大事ですよね。求められているイメージを自ら壊さないようにして、ちょっとずつ冒険していくっていうのが良いと思います」

佐藤 「30周年記念のベスト盤『人間椅子名作選』のリリースと共に国内でのツアーを行い、来年はいよいよ海外で3日間のツアーが控えています。海外初公演な訳ですが、意気込みのほどは?」

和嶋 「実はですね、僕たち海外に行くのが初めてなんですよ。だから、新人バンドの気持ちで行ってきたいと思います。53~54歳の新人です。がんばって参ります」

佐藤 「海外のオーディエンスを震え上がらせてきてください。31年目のご活躍にも期待してます。本日はありがとうございました!」

なお、2019年12月13日、東京・中野サンプラザで行われる『バンド生活三十年~人間椅子三十周年記念ワンマンツアー』のファイナルの様子は、人間椅子の公式YouTubeチャンネルで、同日19時から生配信する予定だ。当日会場に足を運べないという人は、生配信でライブ参加できるぞ~!!

■「人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤」2019年12月11日発売

初回限定盤(2CD+30周年記念手拭い)4545円(税別)
通常盤(2CD)3545円(税別)

取材協力:人間椅子
Report:佐藤英典


Source: ロケットニュース24

【動画あり】『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』の手描き看板が出来るまでが職人すぎる → 絵師「北原邦明」さんに話を聞いた

2019年12月20日、映画『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』が公開される。映画史を代表する超大作「スター・ウォーズ」の完結編だけあって、一般的な映画では無い様々なプロモーション活動が行われているが、その1つが「手描き看板」だ。

看板を手掛けた北原邦明(きたはら くにあき)さんは、1978年にも「スター・ウォーズ エピソード4 / 新たなる希望」の手描き看板の制作に携わったという絵師である。今回は、約40年の時を経て再びスター・ウォーズに導かれた北原さんの職人芸とインタビューをお届けしよう。

・数少ない手描き看板絵師

若い人はご存じないかもしれないが、ほんの20年ほど前まで、映画の看板は多くが手描きであった。日本中の映画館に設置された、例えば「スター・ウォーズ」や「男はつらいよ」などの看板は、絵師と呼ばれる職人さんが1枚1枚手で描いていたのだ。

今回話を聞かせてくれた、北原さんは、いまや日本でも数少ない “手書き看板絵師” のお一人である。多いときには1年間で200作品もの絵を手掛けていたというから「手描き看板業界の巨匠」といっても過言ではあるまい。

その北原さんは1978年、東京・有楽町の映画館「日劇」に設置されたスター・ウォーズの第1作目「新たなる希望」の看板制作にも携わっていたというから驚きだ。今回は完結編となる「スカイウォーカーの夜明け」の手描き看板を制作し終えた、北原さんに話を伺うことができた。

・手描き看板があたり前だった時代

──本日はお時間いただきましてありがとうございます。不勉強で恐縮なのですが、そもそも手描き看板の絵師さんというのは、いつくらいが全盛期だったのでしょうか?

「うーん、20年くらい前まででしょうかね?」

──なるほど、20年前までですか。当時、絵師さん自体は何名くらいいらっしゃったのでしょうか?

「うちの会社だけでも5名くらいですね。絵師の他には文字を入れる職人と、看板の取り付けを担当する大工もいました」

──ふむふむ。でも当時は全て絵ですもんね? 映画館の数だけ職人さんがいらっしゃったということでしょうか?

「複数の劇場を掛け持ちしている絵師さんもいたので、一概にそうは言えないんですが、それなりに絵師がいたことは確かですね。ただ、同じ映画の絵を描いても同じ絵にはならないんですよ」

──ですよね。例えば有楽町でAという作品の絵を描いて、新宿でもAという作品の絵を描いたとして「新宿の方が上手くいったな」なんてことはあったのでしょうか?

「それはあったかもしれませんね(笑)」

・全盛期は年間200作品を制作

──なるほど。全盛期は年間200作品もの絵を描いたと伺っていますが、北原さんご自身はどのような作品が得意だったのでしょうか?

「やはり、その絵師さんによって得意、不得意はありますよね。僕はあまり変化がない絵は得意じゃありませんでした。逆に動きのあるアクション映画などは得意でしたね」

──変化のある絵ですか。それにしても年間200本って凄まじいですね。

「当時はほぼ毎日、1日中絵を描いていました。文字入れの職人は文字ばかり入れていましたね」

──映画の公開が集中する年末なんかは大変だったんじゃないですか?

「そうですね。とてもじゃないけれど描き切れない、ということもあったんですが、そういう時は徹夜で作業をしていました。ただ不思議なもので、どこかのタイミングでスイッチが入るんですよ。そうすると描くスピードがぐんと早くなるんですね」

──へぇ~~。

「普段はそこまで早くないんですけどね。本当に不思議なものです」

──ちなみに、時間がかかる作品の特徴とかってありますか?

「やっぱり、人物が多い作品は時間がかかりますよね。今回の “スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け” は人物が多いので、比較的時間がかかった方です」

・失敗した作品とは?

──そうなんですね。では次の質問です。お気に入りの作品は特にないと伺っていますが、逆に「ちょっと失敗しちゃったかもな」なんて作品はありますか?

「それはありますよ。印象深いのは “ハンニバル” ですね」

──ハンニバルですか。でも納期があったら納品しなきゃいけないですもんね?

「そうです、そうです。ハンニバルのレクター博士は悪人じゃないですか? 怖い顔にしなきゃいけなかったんですけど、妙に可愛い顔になっちゃったんですよね。あれは失敗したな(笑)」

──なるほど。でもそれも手描きならではですね。ちなみに絵は定期的に撤去されてしまうワケですよね? 寂しさみたいなものはありませんでしたか?

「特にないですね。本当に気に入ったものは取っておいたりしましたが、それもあまり見返さないですし。“いつでも描ける” という気持ちでいるので、あまり寂しくなかったのかもしれません」

──おお、カッコいい。では好きな映画なら描きやすい、観たことがないと描きにくい、などはあるのでしょうか?

「特に意識はしていませんが、ひょっとしたら集中力は違うのかもしれませんね。スター・ウォーズは好きな映画なので、集中して描けたんじゃないかと思います」

──元々、スター・ウォーズはお好きなんですか?

「やっぱり、初めて “新たなる希望” を観たときは圧倒されました。全身に鳥肌が立ったことを覚えています」

・今回の制作で特に意識したこと

──そうですか。今回、スカイウォーカーの夜明けの看板を手掛けるにあたり、特に意識したことなどはありますか?

「レイですね」

──レイを力強く描くということですか?

「実際のポスターは、レイも他のキャラクターも背景に溶け込んでいる感じなんですが、絵では肌色を強くしてキャラクターが浮き出るようにしました

──ああ、本当だ。確かに、確かに。

「基本的に看板は遠目で見られるものですから、実際のポスターとはやや表現が違ってきます」

──絵師さんならではのテクニックですね。ちなみに北原さんはお弟子さんを取らないと伺っていますが、理由をお伺いしていいでしょうか?

「まあ、絵の仕事がないですから。インクジェットが普及してから、絵の看板を描く機会はこういったイベントの時くらいになってしまいましたね」

──なるほど。寂しい気もするし、致し方ない気もしますね。

「インクジェットが普及し始めた頃、劇場からはハケ目を無くしてくれ、などの注文がありました。実際に時間もコストもインクジェットの方がかかりませんから、絵の仕事がなくなるのは仕方ないことだと思っています」

──うーむ。

「スカイウォーカーの夜明けの看板も、今回は2週間かかって完成しました。ただインクジェットなら2時間くらいで済むしょうか」

・職人の金言

──時代の流れなんでしょうね。ということは、今回の看板は久しぶりの手描きということになりますが、勘が鈍るようなことは無いのでしょうか?

「うーん、無いですね。あくまで個人的な感覚ですが、自転車に近いと思うんですよ。自転車は1度乗り方を覚えたら、しばらく乗らなくても乗り方は忘れませんよね? 絵も同じで1度覚えたらいつでも描けるものだと思っています。1度習得した技術ですから」

──金言ですね。職人魂が垣間見えました。

「いやいや。でも僕が就職した頃は、ニカワで絵の具を作る係から始まりました。その後、下書きをさせてもらって、徐々に絵を描かせてもらうようになったんですね」

──なんかいい世界ですね。やはり、他の職人さんが描いた絵を見て、勉強したり嫉妬したりしたのでしょうか?

「それはありますね。やっぱり、そういう気持ちがないと上手くならないですから

──でも、1978年の第1作目の看板をご担当されて、さらに最後の作品の看板も描くことになるとはスゴい縁ですね。

「本当にありがたいことです。また絵の看板が描ける機会があるといいですね」

──これもフォースの導きかもしれませんね。本日はどうもありがとうございました!

言葉の節々に職人魂を感じさせてくれた北原さん。特に「自転車と同じ論」には身震いした次第だ。なお、北原さんによる『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』の手描き看板が出来るまでのタイムラプス動画も、ぜひご覧になっていただきたい。

40年以上の時を経ていよいよ完結するスター・ウォーズ。この間、社会や文化、テクノロジー、そして看板の世界も大きく様変わりしたが、変わらない大切な何かを北原さんもスター・ウォーズも教えてくれたのではなかろうか。『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』は2019年12月20日公開だ。

参考リンク:映画「スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け」公式サイト
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.© 2019 and TM Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.


Source: ロケットニュース24

【保存版】現役日本人クリエイターに『ルーカスフィルムに就職する方法』を聞いた →「1番大切な能力は…」

2019年12月20日、映画「スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け」が公開される。同作の公開を多くのファンが心待ちにしていると思うが、実は数名の日本人クリエイターが同作に携わっていることをご存じだろうか?

そのうちの1人が、成田昌隆(なりた まさたか)さん──。現在、ルーカスフィルム本社に所属する5名の日本人のうちの1人で、本作ではミレニアム・ファルコン号やスター・デストロイヤーのモデリングを手掛けた超1流クリエイターである。す、すげえ……!

・ルーカスフィルムの現役社員

「CGモデラー」と呼ばれる成田さんのお仕事を和風に説明すると「CG造型師」といったところだろうか? デザイナーがデザインしたコンセプトアートに無数のパーツを組み合わせ、絵だった状態をCGで立体化させる仕事、そう思って大筋では間違いないだろう。

成田さんは現在、ルーカスフィルム内のVFX制作会社「ILM(Industrial Light & Magic)」に所属しており、いわばルーカスフィルムの社内事情を知る数少ない日本人の1人である。そんな成田さんにILMに入社する経緯や労働環境、さらにはルーカスフィルムに就職するための極意を伺ってみたのでご覧いただきたい。

・入社した経緯

──本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。スター・ウォーズに日本人クリエイターが携わっているという事実に感動しています。さっそくですが、そもそもスター・ウォーズはお好きだったのでしょうか?

「ええ、大好きでした。最初に観たのは高校1年生の “新たなる希望” で、特に4~6が好きですね」

──なるほど、あの時代のSWがお好きなんですね。それではルーカスフィルムに就職したきっかけを教えてください。

「実はルーカスフィルムに入社したくて入社したくてアプローチしたワケではないんですよ。ただ、CGモデラーになって4年目の頃に門を叩かざるを得ないことが起きてしまいまして……」

──というと?

「簡単に言うと、当時勤めていた会社が倒産したんですね。業界第2位の大きな企業だったんですが、イギリスやカナダなど、国を挙げてのVFX誘致合戦に敗れたんです。背に腹はかえられませんから、ILMの門を叩いたんです」

──自信はありましたか?

「正直に言うと、まだ自分には早いんじゃないかと思っていました。当時からILMは業界の中でも最先端を走る企業でしたから。漠然と “10年くらい修行してからかな?” と思っていましたね」

──それが急遽、採用面接を受けることになったと?

「そうです。ただ運良く採用されて、まずは3カ月契約をしてもらいました」

──失礼ですが、当時はおいくつでいらっしゃったんでしょうか?

「2013年ですから……50歳ですね」

──素晴らしいですね。特に日本だと年齢がネックになって転職をためらいがちじゃないですか。そのお歳で「いつかILMで働くんだ」って思えていたことが素晴らしいです。

「ずっと目標ではありました。最終的にはILMで働く、というのが夢でしたね」

──それはスター・ウォーズがお好きだということもあって?

「それはあります。あとやはり業界の中でもILMはスター・ウォーズを築き上げた実績やブランド力が特別な存在なんですね。CGモデラーである以上、いつか働いてみたいと思っていました」

・下積みとかってあるの?

──いや、すごいです。では入社してからの話なんですが、ILMの中で下積みみたいなことってあるのでしょうか?

「基本的に社内で訓練などはありません。全て実践です。最初のプロジェクトはあるテーマパークのCGだったんですが、これを2カ月間全力でやりました」

──雑用とかはないんですね。

「ないですね。運が良かったのが、僕の上司が “スター・ウォーズ / フォースの覚醒” のスーパーバイザーになることが決まっていたことです。彼が僕のことを気に入ってくれて、3カ月の契約が半年になり、そしてスタッフになり、スター・ウォーズに抜擢してくれたんです。おかげで、フォースの覚醒の4人いるCGモデラーの1人になれました」

──ひょえ~。

「1つの仕事をきっちりこなしたことが評価されたのかもしれません」

──では入社されて間もない抜擢だったんじゃないですか?

「そうですね。入社して1カ月後にはスター・ウォーズのプロジェクトを担当することになっていました」

──実力や仕事ぶりはもちろんのこと、運も必要なんですね。

「そうですね。彼が上司ではなく、またフォースの覚醒の担当をしていなかったら3カ月で契約が打ち切られていたかもしれませんね」

・1日の流れ

──なるほど。では次の質問です。ルーカスフィルムでの1日の流れを教えてください。

「9時 – 18時のような縛りはありません。1日8時間労働が基本ですね。ある程度の幅があって10時出社のメンバーもいれば、12時出社の社員もいます。私は7時前には出社しちゃいますね」

──それは早いですね。

「通勤ラッシュを避ける意味もあるんですが、仕事が楽しくて仕方ないので早く職場に行きたいんですね。朝5時には目が覚めてしまうので、起きたらそのまま7時前に出社して、ジムで汗を流し、会社で朝食をとります。17時には帰宅。あとは家で妻と夕食を食べる感じです」

──理想的ですね。素晴らしいです。ちなみに社内でランチをとるとするじゃないですか? ルーカスフィルムの社内に社員食堂的な施設ってあったりするんですか?

ありますよ

──ええええ! あるんですか!? ルーカスフィルムに社員食堂が!?

「ええ、あります。カフェテリアがありますよ。僕はビジターのお客さんを連れて行くくらいでしか利用しませんが」

──それはロマンがありますね! 行ってみてえ……!! ついでに聞いちゃうんですが、社内にスター・ウォーズのアイテムとか飾ってあるもんなんですか?

「飾ってありますよ。実際に使ったものが結構展示されてますね。というのも、ルーカスフィルムはビジターの方がいらっしゃる頻度が高い会社なんです。もちろん一般公開はされていないんですが、社員が手配すればご覧いただくことはできますよ」

──えええええ! 夢のようなツアー!! ちなみに僕が成田さんを訪ねてサンフランシスコまで押しかけたら見学させてもらえますか?

「ええ、特別にやりましょう!

・1番のモチベーションは?

──行くしかねえ! では次の質問です。成田さんはミレニアム・ファルコン号のモデラーを担当されたとのことですが、特に気を付けていることはありますか?

「スター・ウォーズの世界観を守るということですが、結構 自分なりのエッセンスは入れてますよ」

──ですよね。でもスター・ウォーズってコアなファンも多いですし、ミレニアム・ファルコン号の型って基本は決まってるじゃないですか? そこに自分のエッセンスを入れていく作業って難しいと思うんですよね。

「そこが一番難しいところですよね。“俺のファルコンに何してくれてんだ!” みたいな声もあり得ますし。ただ、ある程度はモデラーの色が出てくるんじゃないでしょうか。私は戦艦大和が好きなので、パーツをファルコンに組み込んだりしてますよ」

──なるほど。ではモデラーをされていて、1番の喜びはどういうことなのでしょうか?

「1番のモチベーションは、自分が手掛けた作品を全世界の人に見ていただけること、そして喜んでいただけることですよね。そう考えると手は抜けませんし、妥協もできません

──カッコいい。では成田さんの代表作というか、会心の出来だった作品はなんでしょうか?

スター・デストロイヤーですね。フォースの覚醒のとき、1人でやらせてもらったので非常に印象深いです」

──スター・デストロイヤーは目にした瞬間から圧倒的な強さがありました。勝てねぇええええ! ……みたいな。

「僕らの仕事は、アートディレクターが起こしたコンセプトアートを具現化することです。大まかな見栄えは決まっているんですが、細かいところは何も決まっていません。それを自分で作り込んで形にしていくのがモデラ―の作業ですね」

──パーツの1つ1つまで1人でデザインするんですか?

「ええ、1人でやりますよ」

──ええええ! 気が遠くなりますね……。

「ミレニアム・ファルコン号から流用しているパーツもあるんですが、スター・デストロイヤーの場合は全部で2万5000パーツくらいですかね。それを1つ1つ張り付けていくんです」

──2万5000! そうか、スター・デストロイヤーですもんね……!! いやー、でも大変ですけどいいお仕事ですね。だって、スター・デストロイヤーが自分の手で完成していくんですもん。もちろんメチャメチャ大変だと思いますが。

「そうですね。楽しいですし、やり甲斐はあります。スター・デストロイヤーのブリッジは、前から見ると戦艦大和のようなシルエットになってるんですよ」

──へぇえええ。ちなみに、上司からダメ出しされたりすることはあるんですか?

「もちろんありますよ。ただ、完成してから見せてダメだったらシャレにならないので、段階的に承認を取りながら作業は進めています」

・必要不可欠な能力とは?

──すごいな……。ただただ、感動しております。ちょっと話は変わるんですが、ルーカスフィルムには現在5人の日本人スタッフがいるそうですが、英語力と何が大切なのでしょうか?

「うーん、英語力はそこまで大切じゃないです

──え! そうなんですか?

「例えばモデラーなら造形の能力が1番大切です。コミュニケーションはもちろん必要ですが、要するにアウトプットでわかりますよね。こいつはこんなにスゴイものが作れるんだ、と」

──なるほど。

「僕らの肩書はCGプログラマーではなく “CGアーティスト” なんですね。極端な話、CGソフトが使えなくても英語が話せなくても大した問題ではないんです」

──アーティストとしての能力が評価されると?

「そうですね。そこがないと厳しいと思います。とはいえ、たまに全く英語が出来ない人が採用されていますが、それはそれで大変そうですね」

──そうなんですね。ちなみに、初対面で本当に失礼なことをお聞きするんですが、やっぱりメチャメチャ給料もいいんですか?

「いや、日本の企業の駐在員だった頃の方がサラリーは良かったです

──ええええええええ! そうなんですね!!

「ただ、やりがいは何倍にもなりました。CGモデラ―自体は比較的需要のある職種で、私のところにも給料3倍の条件で、他業種の世界的企業(マジで世界的だった!)からヘッドハンティングがありましたね。もちろんお断りしましたが」

──もったいないような気もしますが、でもルーカスフィルムだもんなー。僕もいずれ入社できますかね?

「アメリカの会社は入ること自体はそこまで難しくないんですよ。ただ、使えないとすぐクビになっちゃうだけで」

──とにかく実力を磨いておけってことですね。あと、以前キャスリーン・ケネディ社長が “とにかく情熱が欲しい” と仰っていました。

「そうですね。仮に不採用だと言われても自分のやりたいことを猛アピールするといいかもしれません。意外と “こいつは情熱があるな、じゃあ1回やらせてみるか” と採用されることもあるようです。ただ、実力が見合ってないと1週間でクビになったりしていますが」

──うーん、なんて実力主義。でも夢のあるお話でした! 本当にサンフランシスコまで押しかけますので、その際はぜひよろしくお願いいたします!!

というわけで、いつかルーカスフィルムに就職したい人にとっては、有意義な情報もりだくさんな内容ではなかろうか。とにかく実力と情熱、そして多少の運が必要だが、もしあなたに実力と情熱があればあとはフォースが導いてくれる……かもしれない。

なお、今作でも成田さんはミレニアム・ファルコン号を始め、数々のモデリングを担当している。映画「スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け」は2019年12月20日公開だ。

参考リンク:スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.


Source: ロケットニュース24