「君はホウケイなのか?」 医師に真顔で聞かれた直後、言葉を発せずとも相互理解が成り立った話 / あるいは一種のコミュニケーション論

コミュニケーションを取るのに、必ずしも言葉が必要というわけではない。ボディーランゲージで意思の疎通をはかれることもあるし、態度や空気感で理解できることもある。そして何より、「お互いの行動で分かり合える」ことだってある。

むしろ、行動で分かり合えることがコミュニケーションの理想形ではないだろうか。そこに、虚栄心や嘘が入り込む余地は無い。ただ、「行為」だけがある。それだけに説得力があり、無駄が無い。実に効率的だ。

どれだけ効率がいいのか、例を1つ挙げて紹介したい。個人的な話で恐縮だが、先日 私は皮膚のピリピリした痛みに耐えかねて、皮膚科へ足を運んだ。そこでは当然、皮膚のどのあたりが痛いかを医師に伝える必要がある。私は「主に左半身で、脇腹から太ももの付け根にかけて」と言った。

するとこれまた当然だが、太ももの付け根を見せるためには脱がなければならない。私は医師の指示に従って診断台に横たわり、パンツを脱いだ。すると……

太もものつけ根に出ている湿疹等を診察した医師から、「見る限り、ヘルペスが出ている可能性がありますね。血液の検査をしましょう」とのお言葉。結果的にヘルペスだったから医師の予想は大当たりだったのだが、それはいい。

そんなことより、注目すべきはその後に医師が発した言葉である。私の股間をチラっと見た医師は、こう言ったのだ。

「君、ホウケイ?」

ショックで脳の機能が停止した………………と思うかもしれないが、実際は全然そんなことはなかった。なぜなら私は正真正銘のホウケイなのだから。そして何より、質問が耳に入った瞬間、私は医師の意図していることをすぐに悟ったため、まったくショックではなかった。

どんな意図かというと、医師は治療(手術)をすすめた方がいいホーケーなのかどうかを見極めようとしているだけなのだ……たぶん。質問を聞いて思い出したが、病院のホームページには「当院はホウケイ手術も請け負ってます」的なことが書かれていた。それだ、それ。

早い話が、新星か火星か。もしくは広東というパターンもあるが、まぁそういうところの確認作業である。医師としては当然のことと言えるかもしれない。

で、ここからの私の行動が自分でも驚きだったのだが、私はその医師の質問に言葉では何も返さなかった。ただ、行動で答えたのだ。何をしたのかというと……

剥いたのだ

何も言葉を発せず……

ただただ剥いたのだ

誤解しないで欲しい。私は医師の質問を無視したのではない。むしろ、一歩先回りして答えていたのである。それも、言葉ではなく“行動” で答えたのだ。新星じゃなく、火星だと

それを見た医師は、じっくりと観察したのち……

深くうなずいた

行動で分かり合えた瞬間である

その後、医師は「今の状態なら、無理に手術しなくても大丈夫ですね」と言葉をかけてくれ、ホウケイの種類についての簡単な説明をしてくれたのだが、それはあくまでも念のためのやり取り。一番大事なコミュニケーションは、「剥き」からの「うなずき」で終わっていたことは言うまでもない。

つまり、私は「火星なので手術は大丈夫です」と伝え、医師は「その状態ならまぁ(ギリ)大丈夫」と返してくれた。言葉で書くとややこしいが、行動で示し合えば分かりやすいことの好例と言えるだろう。

・理想のコミュニケーションとは?

百の言葉よりも一つの行動。それで分かり合えたら、話が早い。やり取りとして、ソリッドかつドライである。個人的に、本来コミュニケーションとはこうあるべきだと思うのだが……読者のみなさんは、どうお考えになるだろうか。

執筆:和才雄一郎
イラスト:稲葉翔子
Photo:RocketNews24.


Source: ロケットニュース24