【バットマンデー】アメコミ嫌いが『ダークナイト トリロジー』を初めて見て思ったこと

DCコミックスのプロモーション企画「バットマンデー」が本国アメリカを中心に9月19日に開催される。例年9月に世界中の企業や書店とコラボし、ファンとともにバットマンの活躍を祝う祭典だそう。

「だそう」というのは、実は筆者はいわゆる「アメコミ」映画が苦手で、これまであまり縁がなかったからだ。しかし最近、衝撃を受けた作品があった。ご存じ大ヒット映画『ジョーカー』だ。

さらに続けざまに『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』を見て、がらりと認識が変わった。感じたことをまとめてみたいが、なにぶん初心者なので的外れなことを書いていたら心の中で「バカめ」と笑って欲しい。

・どうしてアメコミが苦手なのか

映画そのものは好きなので、『スパイダーマン』など話題の新作は一応見るし、「面白かった」「よくできた話だった」とも思うが、ハマるまでにはいかない。理由をひと言でいうと、荒唐無稽(こうとうむけい)さが気になるのである。

この感覚は、たぶん宝塚と似ている。宝塚が苦手な人は「オーバーアクションな演技」や「厚塗りメイク」「セリフの途中でいきなり歌い出す役者」など、現実世界での「ありえなさ」が気になり、どんなに役者やストーリーがよくても没入できないのではないだろうか。話に集中するよりも、つい失笑してしまうというか。

宝塚好きの筆者からいわせれば「そういうものだと思って見る」……つまり自分がその世界のルールに溶け込むことがポイントなのだが、アメコミ映画も同じだと思う。

筆者はそういった暗黙のルールを受け入れることができていなかった。漫画ならまだしも、実写映画というリアリティのある世界になると「いや、正体ばれるだろ」「街の人、普通に受け入れるんかい」など、細かいところが気になってしまうのである。ヒーローものの軸となる勧善懲悪のシナリオが「ご都合主義」に見えてしまうこともある。

・まずは『ジョーカー』を見た

この時点での筆者の知識は「バットマンの敵らしい」という程度で、本家『バットマン』については1作も見たことがなかった。そのバットマンについても「大富豪の坊ちゃんが私財を投じて敵と戦う話」という認識。

「バットマンはヴァンパイアの呪いでコウモリの身体になった、〇か×か?」とか出題されても平気で間違えるレベルである。

映画『ジョーカー』にはスーパーヒーローは出てこない。胸がすっとするような、かっこいい銃撃戦もカーチェイスもない。ただ淡々と、1人の男が堕ちていく様子を描いている。

圧倒的な “人間” のリアリティ。ガリガリに痩せた身体、気弱そうな言動、不気味な発作と、ホアキン・フェニックスの怪演も際立っていた。クラスにいたら「キモい」と排斥される存在なのは明らかで、社会的弱者を見事に表現している。

作中、主人公はよく知られた「ジョーカー」に変貌していくわけだが、その心境の変化がわかりすぎる。「そりゃ、そうなるよ」という必然性があるのだ。残忍な行動に決して共感はできないのだが、理解はできる。そこには安直な勧善懲悪も予定調和もなかった。筆者の中で、ジョーカーというキャラクターが作り物を超えた瞬間だ。

筆者は最後まで目を離せなかった。魅了されたといってもいい。背景にはゴッサムシティの陰鬱(いんうつ)な風景が広がる。貧富の差が激しく、不衛生で治安も悪く、歩いているだけで気が滅入るような街。もっとこの街を、正確にいうとジョーカーを見たいと思った。

・『ダークナイト トリロジー』を見た

徐々に理解したのだが、バットマンのようなアメコミは、時代時代の作者によっていくつもの設定が生み出され、パラレルワールドのように作品が展開していく。1つの作品のバットマンが、別の作品のバットマンと同一人物とは限らないということだ。

「もっとバットマンを見たい」と思った筆者は、あまり知識もなかったので、商業的に有名な『ダークナイト トリロジー』を見た。これも夢中になった。

基本的に描かれているのはヒーローものらしい「善と悪の戦い」なのだが、この3部作が問いかけるのは「悪とはなにか?」という根源的な疑問だ。善良な人間が、ちょっとしたボタンのかけ違いで悪の道に堕ちていく。逆に悪人と思われた人が極限状況で人間的な行いをする。

ビギンズ、つまりバットマンのはじまりはたぶん複数のパターンがあるのだと思うが、コウモリへのトラウマ、貧富の格差の犠牲になった父母、その後のブルース・ウェインの人格形成など、筆者にとってはすんなりくるシナリオだった。

ゴッサムシティの退廃した雰囲気は健在だ(という表現は公開順からいうとおかしいのだが、筆者の期待に対してという意味で)。暗く荒んだ世界観が、物語に深みを与えているのは間違いない。

それでいてバットモービルのようなメカニカルな部分は文句なしにかっこいい! 現実ばなれした圧倒的な財力、地下に隠された秘密基地、賢く頼りになる老練の仲間たちなど、わくわくするようなエッセンスもちゃんと散りばめられている。

・恋に落ちた

ある作品を好きになるというのは、世界観にホレるのと同義だ。理屈抜きで恋に落ちるような感覚がなければ、見た直後は「あぁ、面白かった」と満足するが、すぐに忘れてしまう。

いま筆者はバットマンについて検索しまくっている。ゆかりのあるものが欲しい、ニューヨークを訪ねたい、もっと映画を見たいと熱にうかされている状態だ。アメコミ作品でこんな気持ちになったのは初めて。これまで無視してきたことを心から謝りたい!

感染症の影響もあるのだろうが、今年のバットマンデーはバーチャルイベントが中心のようだ。日本ではユニクロでコラボアイテムを販売とのこと。英語サイトになるが、詳細はDCコミックスの告知をチェックだ!

参考リンク:DCコミックスAmecomi Info
執筆・イラスト:冨樫さや
Photo:RocketNews24.


Source: ロケットニュース24

【コラム】映画『X-MEN』がアベンジャーズになれなかった理由 / あるいはアメコミ映画に影響を与えすぎた伝説の作品について

2019年6月21日、映画『X-MEN ダーク・フェニックス』が公開される。ご存じの方も多いと思うが、アベンジャーズなどの権利を持つ “ディズニー” がX-MENなどの権利を持つ “21世紀FOX” を買収、そのことから本作は「最後のX-MEN」などと呼ばれている。

ところがどっこい、こんな言い方はアレかと思うが、とてつもなく大きな話題になった「アベンジャーズ / エンドゲーム」と比べて『X-MEN ダーク・フェニックス』はさほど話題になっていない。果たして両者の差は何なのだろうか?

・当初はX-MENが優位

X-MENの第1作が公開されたのは2000年のこと。そしてMCU第1作の「アイアンマン」が公開されたのが2008年だから、歴史的にはX-MENの方が8年分のアドバンテージがあったことになる。むしろ映画「X-MEN」の成功を見たマーベルがアイアンマンで後追いしたくらいだから、当初はX-MENの方が遥かに認知度は高かったハズだ。

だが両者の立場はいつの間にか逆転してしまった。そもそもX-MENはマーベルの大人気タイトルで、それに目を付けた21世紀フォックスが映画化の権利を買い取ったものだ。マーベルは「スパイダーマン」の権利もコロンビアに売ってしまい、残ったのは成功の見込みが薄いものばかり。それでも今日のアベンジャーズは大成功を収めている。

・作風の違い

アベンジャーズがここまでヒットした最大の理由は、あまり深く考えなくても楽しいアメコミらしいアメコミ作品だからであろう。要するにポップということだ。もちろん様々な伏線が張られており見方によっては深い作品なのだが、子供が見ても楽しい作品であることは間違いない。

一方でX-MENはリアルかつダークを作風で、キャラクターの内面に迫る手法をとってきた。突然変異した人類「ミュータント」が活躍するX-MENは “差別” がテーマになっており、基本的にはリアルな作風とマッチしやすいタイトルである。事実、スピンオフ作品も含めれば10作品以上が公開されているから、決して失敗ではいないのだろう。

元々コミック版のX-MENは、子供がコミックを読まなくなっていた時代にマーベルの救世主となった大人向けの作品である。当時の読者たちはアメリカの盾を持ったコテコテのキャプテン・アメリカより、自らのパワーに葛藤するX-MENを支持したのだ。そして映画もその流れで制作された。

・ある偉大過ぎる作品

だがしかし、アイアンマンの公開を機にアメコミ映画の風向きが変わり始める。X-MENも何度かはポップ路線に舵を切るタイミングがあったハズだが、結局は “ある作品” からの呪縛から逃がれられなかったのだと記者は推測している。アイアンマンと同じ2008年公開の「ダークナイト」だ。

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A watchful protector…. #TheDarkKnight

A post shared by The Dark Knight Trilogy (@thedarkknighttrilogy) on Dec 6, 2015 at 9:43pm PST

数あるアメコミ映画の中でも、いまだ不朽の名作として名高いダークナイト。リアルかつダークなテイストはX-MENと通じるポイントが多い。映画史の残る大成功を収め、実際に数多の賞を受賞した傑作中の傑作「ダークナイトシンドローム」から、最後までX-MENは抜け出せなかったのではなかろうか?

それはそれで決して悪いことではないのだが、アベンジャーズと大きな差が付いてしまったことは事実である。時代が代わった、時代の流れを読み切れなかったと言ってしまえばそれまでだが、1つの偉大なる作品が「今日のアメコミ映画界の様相を決定的なものにしてしまった」と見れば実に興味深い。

また、もし「ダークナイト」の公開以降に「アイアンマン」が制作されていたとしたら、もしかしたらMCUもダークかつリアルな手法を選択した可能性もある。それほど「ダークナイト」の完成度はすさまじく、実際にダークナイト路線を目指した「ファンタスティック4」は盛大にすっこけた。

ちなみに、ダークナイトのバットマン要するワーナーブラザーズはすでにポップ路線に舵を切っている。実際に「ワンダーウーマン」や「アクアマン」はMCU作品にも勝るとも劣らない秀逸な出来で、MCU作品に対抗できるポテンシャルを秘めているのではなかろうか? 時代はやはり、そちらを求めているのだ。

・ダーク・フェニックス公開

なお『X-MEN ダーク・フェニックス』は最後の最後までダークな作風であり、万人受けするとは言い難い。が、それでもダークな作風だからこそ描けるX-MENらしさを再確認したこともまた事実である。X-MENのみならずアメコミ作品が好きな人ならば、劇場に足を運んでもみてもいいハズだ。

今後数年のうちにディズニーの指揮下で新たなX-MENが登場することだろう。MUC作品らしい明るい作風になるのか? それともコミックやこれまで映画の色を一定は残す暗めの作品となるのか? いずれにせよ、そのとき大きな注目を集めることだけは間違いない。

参考リンク:「X-MEN ダーク・フェニックス」公式サイト
Report:P.K.サンジュン
Photo:©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation


Source: ロケットニュース24