家を売ろうとしている人にとって「査定」は重要な要素。一般的には不動産会社に依頼して行います。そのため、相手の言いなりになってしまう場合も。また、査定書の内容を不動産会社の人に説明してもらっても、理解している人は少ないようです。
こうしたリスクは、できるだけ避けたいもの。そこで、「業者は査定をどのように行っているか」「どんな不動産業者に依頼したらよいか」について紹介していきます。
1. どのように査定は行われるの?

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不動産の売却で査定を行う理由は、不動産の価格を第三者の目から見た際に「売れる価格」を設定しなければならないからです。よほどの人気物件でない限りは、強気の価格設定は不可能です。そのために、第三者の公正な査定が必要になります。
判断基準になるのは、以下の4項目です。
- 近隣の物件価格
- 公示価格や路線価ベースで判断
- 立地条件から相場を割り出す
- 物件の条件から価格を算出
1.近隣の物件価格

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不動産価格は地域の相場が価格に大きく反映します。条件の良い物件だとしても東京と福島だったら、人が集まる東京の方が相場が高くなるのと同じような考え方です。実際はもっと狭いエリアでの相場を参考にします。最新の相場を確認するには、国土交通省の「土地総合情報システム」で確認できます。
- 不動産取引価格情報検索
- 地価公示都道府県地価調査
を活用できるので、不動産業者に依頼した金額が不当でないか判断する際の基準にしましょう。
2.公示価格や路線価ベースで判断
公示価格とは、地価公示法に則って、毎年1月1日に国土交通省土地鑑定委員会が公示する価格のこと。路線価とは相続税や路線価を計算するために、毎年7月に政府が発表適用する評価基準です。路線価は公示地価の8割が目安となり、逆に公示価格が分からない場合は路線価に1.25倍をして算出しましょう。
・国土交通省 地価公示・都道府県地価調査
・国土交通省 財産評価基準書路線価図・評価倍率表
を参考にするとよいでしょう。
3.立地条件から相場を割り出す
立地条件は以下のような要素を見ていく必要があります。
- 公共交通機関との距離
- 公共施設との距離
- 金融機関との距離
- 商業施設との距離
- 駐車場との距離
- 治安
様々な要因がありますが、各施設や公共交通機関との距離で算出されることが多いです。これらの距離が短いと、毎日の通勤や通学時間が減るため、物件を購入する人に大きなメリットになります。これらの条件がよければ、買い手に売りやすい物件と判断され、査定価格が高くなります。
4.物件の状態から価格を算出

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立地条件と共に重要視される指標が「物件の状態」です。
- 外壁や屋根に損傷がみられないか
- 物件内の設備が充実しているか
- 間取り
- 防犯対策
- 部屋の方角
- 眺望
などを確認します。
2. 査定を依頼する際の注意点

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自分の家の査定は優良な不動産会社に行ってもらいたい、と誰もが思うはずですが、不当に低い査定価格を出す不動産会社がいるのも事実です。では査定を依頼をする際にどんなところに注意すればよいのでしょうか。
2-1 相場を自分で理解する
不動産査定の判断基準を自分で知っていれば、損失を出す可能性が低くなります。自分が不動産会社に査定を依頼した際に、自分が出した査定と大きく価格が異なれば、疑問を持つことができます。具体的には次のような方法があります。
・路線価から予想する
土地の大まかな相場は路線価を公示価格に戻し、流通性比率を掛けることで相場を算出します。「流通性比率」とは、不動産会社が「物件が実際に売れるかどうか」を割合とした数値です。
不動産を購入する層との認識のズレや査定する地域の不動産需給を考えて「流通性比率」が算出されます。流通性比率は1が基準となり、0.93%~1.07%の間で変動ことが多いです。路線価からの算出は流動性比率が変化しやすく、固定資産税評価額による予想よりも信頼性が低くなりがちです。
・固定資産税評価額から予想する
路線価は公示価格の8割でしたが、固定資産税評価額は公示価格の7割程度の価格となっていて、固定資産税評価額を0.7で割った数値が大まかな相場となります。固定資産税評価額は市町村が発行しますので、手元にあるはずです。手軽に計算でき、路線価からの算出よりも信頼性がありますので試してみてください。
・原価法を使用して算出する
原価法とは、不動産の再調達原価から大まかな相場を算出する方法です。つまり「現在建てたらいくらか」を計算するのです。不動産鑑定士が評価を行う方法となるので、内容が少し難しくなります。
再調達原価は、今の不動産をもう一度建て直すとしたら費用がいくらなのかという指標です。築年数によってどれくらい価値が低下しているか等を考慮して減価修正します。
2-2 近隣物件の情報を開示してくれる不動産業者を選ぶ
不動産業者は不動産査定の項目以外にも、「近隣物件の販売状況」や「近隣の販売実績」に関しても情報を得ているはずなので、聞いてみるべきです。実際に不動産会社が物件を販売しているのに物件が売れないなら、査定価格が間違っているということです。
売れた物件、売れない物件を教えてくれる不動産業者は、査定に関する情報を開示する透明性の高い会社だといえるでしょう。
3.まとめ

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不動産業者の中には、住宅の査定価格を不当に設定してくるところもあります。そのような業者に自分の物件を査定されるのを防ぐためには、査定に関して自分がある程度の知識を持ち、おおよその価格を知っておくこと、不動産業者を選ぶ「眼」を養っておくことが大切です。
※参考
国税庁 土地総合情報システム
国土交通省 地価公示・都道府県地価調査
国土交通省 財産評価基準書路線価図・評価倍率表
ファイナンシャルプランナー(AFP)/宅地建物取引士一般社団法人/家族信託普及協会®会員 吉井希宥美
Source: 日刊住まい