「うちの親は、どうしてこんなにモノをたくさん持っているのだろう」と思っている人はいませんか?
いまのシニア世代はモノが少ない時代に育ち、モノを増やすことに幸福感を感じ、たくさんモノを所有している傾向があります。
そのため、いざ介護施設への入所や入院になったとき、必要なモノが見つからなくて慌てふためき、親子ゲンカになるケースも。
近年は「終活」という言葉が浸透し、自分が元気なうちに片づけをしようとする親世代も増えてきていますが、子世代は、どんな形で親の片づけを応援すればよいのでしょうか。遺品整理、生前整理のスペシャリストであるおのあけみさんに聞いてみました。
一緒に片づける際は、かける言葉に気を付ける
年を重ねるにつれ、以前であれば簡単にできた掃除や片付けもだんだんとできなくなっていきます。実家の中が大量のモノで溢れていたら、つい強く言ってしまうこともあるかもしれませんが、親の持っている価値観を大切にしないと親子ゲンカになってしまいます。

CORA / PIXTA(ピクスタ)
「ゴミ」「捨てる」「邪魔」はNGワード
おのさんが開催する片づけ相談会にくる人の中には「お母さんが片づけないと私が困る」「片づけない親で(私が)恥ずかしい」と話す人が多いといいます。
近年は「ミニマリスト」ブーム。モノをあまり持たないのが美徳とされている風潮があるため、モノをたくさん持っている親をあまりよく思っていない子どもが多いようです。
モノを捨てることを強要してしまうと、親は怒りや拒絶心が働くのが普通です。親の持ち物を「ゴミ」「邪魔」と言ったり、雑に扱うのはNGです。
手持ちの洋服の数を減らしてもらう場合は「着ない服は捨てて」とストレートに言うと、親は傷ついてしまいます。「お母さん、その服よりも、こっちのほうが似合うね」などと声をかけたほうが、「捨てて」と言われるよりも、片付けがすんなり進むのではないでしょうか。
片づけは「捨てる」のではなく「手放す」こと
おのさんは、片づけのアドバイスを行ってきたなかで、一番言ってはいけない言葉は「捨てる」だと考えているそうです。
「『捨てる』という言葉は、思い出をその時点で捨ててしまうようなイメージがわくもの。言葉を言い放ったたほうも、言われたほうも、罪悪感を抱いてしまいます。『捨てる』だとモノの命は絶たれてしまいますが、『手放す』は、次にモノが活かされるという希望がわく言葉だと思います」
片づけ計画を立ててあげよう
親の片付けを成功させるためには、片づけのプランを立ててあげるべき、とおのさんはいいます。具体的な方法をみていきましょう。

kelly marken / PIXTA(ピクスタ)
親主導で片づけを
まずは「要るもの」「要らないもの」「一時保留するもの」に分類してもらいます。

freeangle / PIXTA(ピクスタ)
メガネ、杖、貴重品などは、即座に「要るもの」と判断できますが、ほかのものは迷う人が多いのではありませんか。迷った場合は「一時保留」に分類。
仕分けができ、一時保留になったものは、6か月程度期間を置いたら、もう一度見直します。ここからは、急ぐ必要はありません。繰り返し作業を行います。ポイントは要らないものを選ぶのではなく、使うものを残すという感覚で整理すること。「いつか使うのでは?」という物には、永遠に出番はありません。
積極的にリサイクルに出す
リサイクルショップは、50代くらいまでの人なら利用経験者も多いと思いますが、60代後半以上の高齢者になるとまだまだユーザーは少数のようです。捨てるものが決まり、リサイクルできそうなものがあったらリサイクルショップを紹介してあげてはいかがでしょうか。
ただし、買い取り金額はあまり期待できないということを伝えておかないと「あんなに高かったのに」と買い取りをしぶって、結局売らずに持ち帰る、という残念な結果になりかねません。

KY / PIXTA(ピクスタ)
またインターネットのオークションサイトや個人間売買サイトの利用もよいでしょう。最近は出品方法もシンプルになりつつあるので、スマホやパソコンを利用している親には積極的に勧めてみましょう。
親には親の価値観がある

marihuku / PIXTA(ピクスタ)
片付けをする際は、親の信頼が得られなければ片づけは進みません。親には親の価値観があることが大前提。
親の所有物に対し、安易に「ゴミ」扱いしたり、「邪魔」と言ったりするのはご法度。すぐ手放すことのできないものもあるでしょう。
上記のような方法で、親が納得のいく形で処分していくのが理想的です。待ってあげることも、手助けの1つの方法です。
おの あけみ(55歳からの片づけ講座・講師)
1960年生まれ、群馬県在住。㈱リクルートに20年間勤務し、住宅情報誌の制作・営業に携り、快適な暮らしには建物本体だけでなく、物の整理収納が大切なことを実感。現在は、「55歳からの片づけ」を講座開催と出張片づけサービスでサポートしている。宅地建物取引士、二級建築士、整理収納アドバイザー、認知症予防ファシリテーター(NPO認知症予防サポートセンター)などの資格を所持。
Source: 日刊住まい