SNSで話題の「蘇(そ)」作りに超絶料理下手が挑んでみたら… 大成功! 一番おいしい食べ方も模索してみた

平安時代の貴族に楽しまれた贅沢な食べ物「蘇(そ)」。新型コロナウイルス感染症の流行による影響で給食分の牛乳が余ってしまい、SNS上で牛乳の消費を推奨する流れが起こった結果──令和の時代において、一大「蘇」ブームが起こった。

数少ない「蘇」の製造方法について書かれた古の文献を参照するに、牛乳をかき混ぜながら煮詰めれば完成らしい。簡単そうだ。それならば、中学時代の調理実習ですら毎回失敗していた筆者でも作れるに違いない。ということで、超絶料理下手が「蘇」作りに挑んでみた。

・五里霧中

筆者は博物館で一度、「蘇」を再現したものを食べたことがある。茶色っぽくてパサパサした甘く濃厚なチーズ、といった感じだった。料理下手というハンデはあるものの、今回の「蘇」作りにおいて見た目や味、食感における具体的な「ゴール」をイメージ出来るのは強みだと思っている。古の貴族を魅了した食べ物、絶対再現してやるぞ。

蘇の作り方は平安時代中期の法典「延喜式」などに軽くだが記載があり、「一斗(約18L)の乳をかき混ぜながら煎じて一升(約1.8L)の蘇が得られる」らしい。つまりは牛乳をかき混ぜながら煮詰めれば良いのだろう。ということで、フライパンに入るだけの牛乳(2L)と木べらを用意し、火力MAXで煮詰めていく。簡単そうだ〜! これならゲームしながらでも出来そう。

ゲームをしながら牛乳をかき混ぜ続けること約5分。フライパンの端や底がガビガビしてきた! 博物館で食べた「蘇」は茶色くともコゲてはいなかったため、恐らくコゲを放置してはいけないのだろう。ここからはゲームをやめ、ひたすら牛乳をかき混ぜながらガビガビをこそぎ落とす作業に専念する。本当にこれで「蘇」が出来るのだろうか……

「蘇」作り開始から約10分、湯葉のようなものが出てくる。固まってきているということなのだろうか、それとも……とやや不安を覚えつつも、筆者に出来るのはただひたすら牛乳をかき混ぜ続けることのみ。ガビガビと戦いながら、完成を信じてひたすらに腕を動かす。クッキーが焼けるようないい匂いがしてきたが、煮詰まってきている証拠だろうか。

開始から30分を過ぎると、だんだんガビガビへの対応が追いつかなくなってきた。こそぎ落としてもこそぎ落としてもガビガビが出てくる! 正直とても面倒くさい。しかし、その成果もあってか、牛乳がやや「もったり」とした質感になってきた。

そこからさらに15分が過ぎ、「蘇」作り開始から約45分──牛乳が突然ドロドロになった。固まる寸前なのでは? と調子に乗った瞬間、牛乳からの攻撃を食らう。ドロドロになったせいで、泡が弾ける瞬間にめちゃくちゃ跳ねてくる。熱いし痛い! しかし、ここで止めるわけにはいかない。フタでガードしつつ、混ぜ続けるのみだ。

牛乳からの攻撃を受けながらもかき混ぜ続けること約15分。「蘇」作り開始から1時間が過ぎたところで、ついに牛乳が完全に液体ではなくなった。しかしまだベチャッとしているため、博物館で食べた「蘇」の「茶色っぽいパサパサした濃厚なチーズ」感を求めて練っていく。火力はMAXからやや弱め、木べらで地道に練り回す。

元牛乳、いや「蘇(仮)」を練り続けているとベタベタ感が薄れ、まとまりが良くなってきた。恐らくこの作り方で間違いない、あと少し水分が飛べば「蘇」になるはずだ。勝利を確信し、練り固めていると──

そぼろになった。なんで!!? 色は茶色がかっており博物館で食べた「蘇」に近いものの、形が明らかに違う。完全にそぼろだ。もしかしたら「おから」かもしれない。元は牛乳だが。どうしてこうなった……?

しかしまだ失敗と決まったわけではない。恐らくこれも「蘇」作りの過程なのだ。成功を信じ、そぼろ状の「蘇(仮)」を一つのかたまりにするため、サランラップに包んで必死にこねる。そして叩く!

サランラップ越しに見るとそぼろ状態は脱したようなので、そのまま冷蔵庫で冷やす。熱が取れたら恐らく「蘇」になっているはずだ。

冷蔵庫で冷やすこと約2時間。サランラップを開けると……ちゃんと固まってる! わりと表面の硬度が高く、切るのが大変なレベルになっている。

ややコゲが混ざっているものの、全体的な見た目は「茶色っぽくてパサパサ」している。これはもしや成功では……?

ドキドキしながら食べてみると……めちゃくちゃ「蘇」〜ッ! 博物館で食べた「蘇」そっくりな食感・味に仕上がっている。表面はしっかりしているが脆く、濃厚なチーズといった風味がするものの、確かな甘さを感じる。贅沢品とされていたのも納得の手間と味わいだ。「蘇」、超美味しい。

・「蘇」をどう食べるか

「蘇」が美味しすぎてパクパクと食べていたものの、濃厚な味わいのせいか若干飽きてきてしまった。そこで、「蘇」をどうアレンジすればいいか考えてみようと思う。塩・醤油・マヨネーズ・柚子胡椒・ハチミツを用意し、どの調味料が合うかを考えていく。

まずは塩。「蘇」に甘さがあるものの、濃厚なチーズ感と塩味は合うだろうと思いきや……若干甘さを引き立てるだけで、あまり味に変化がなかった。合う・合わないではなく、つける意味が無いレベル。

次に醤油。何にでも合う万能調味料ともいえる醤油ならば、「蘇」の新たな美味しさを引き出してくれるのではないだろうか。期待して食べてみると、醤油のしょっぱさと香ばしさが「蘇」の濃厚チーズ感・甘さと合っているものの、やや風味同士が濃過ぎる気がする。何だか「惜しさ」を感じる味だ。

一方で、これまた何にでも合うマヨネーズはというと……死ぬほど合わない。驚きのミスマッチさ。マヨネーズとチーズは鉄板の組み合わせなため「蘇」とも合うかと思いきや、それぞれの味わいが全く混ざり合わない。不味くはないが、違和感の残る不思議な味がする。

続いては柚子胡椒。正直「蘇」の甘さに、柚子胡椒の辛さは合わないだろう。そんな風に思いながら「蘇」に柚子胡椒を乗せて口に運ぶと……めっちゃくちゃ美味しい! 「蘇」の飽きるほど濃厚な味わいを、柚子胡椒がマイルドにさっぱりと仕上げる。しかも「蘇」の脂肪分のせいか、柚子胡椒の辛さもマイルドになっている。これはいくらでもいけそうだ。

最後にハチミツ。甘味のある「蘇」に甘さを足すとどうなるのか、と思いながらハチミツをつけて食べてみると……これまた美味しい。完全に「蘇」がスイーツ化している。デザートとして食べるのもアリだと思える味わいだ。柚子胡椒ともまた違う「蘇」の一面を引き出してくれる。

しかし、まだ気になる点がある。「蘇」は元々牛乳で、水分を含んでいた頃はドロドロしていた。おまけに、濃厚なチーズのような味わいも持っている。これはもしや、水分を含ませると「超・とろけるチーズ」になるのでは……? 検証するため、カップ麺に「蘇」を投入してからお湯を入れてみる。

3分待ってフタを開けてみると……表面が湿ってるだけで、全く「とろける」感がない。食感も、水分をやや含んだだけでほぼ変わらず、なおかつカップ麺の味と全然調和していない。塩分濃度の差などで結果に変化がないよう、念のため違う味のカップ麺も用意してみたが、結果は変わらずだった。そしてやっぱり味が合わない。

最後に、醤油をつけた「蘇」の「風味同士が濃過ぎる」状態を解消できないかと、「蘇」を切った時に生じた粉状の「蘇」を冷や奴に乗せて醤油をかけてみた。お豆腐が上手く醤油と「蘇」の「風味同士が濃過ぎる」状態を和らげてくれないかと思い、食べてみると……成功だ。お豆腐の「コク」を引き出すかのような味わいになり、大満足だった。

古代の贅沢品「蘇」。令和の時代にも一大ブームを巻き起こす魅惑の食べ物だからと後先考えず大量に作ってしまったが、平安貴族の藤原道長は一説によると「蜜をかけた蘇」の食べ過ぎで糖尿病を患い亡くなったらしい。

「蘇」作りに挑むときはロマンだけではなく、「蘇」の濃厚な味わいやカロリーにも思いを馳せて欲しい。筆者はロマンだけに思いを馳せた結果、「蘇」をどうやって完食するかに頭を悩ませている。

Report:伊達彩香
Photo:RocketNews24.


Source: ロケットニュース24